ネリーのおやつ

ボッサリした日常をざっくりと ブログは短くオヤツ的なスナック感溢れるカンジで

センス

花梨さんの記事を見て、脳裏にキラリと瞬くものがあった。
『好きだけど苦手。嫌いだけど得意。』
http://d.hatena.ne.jp/hate7510/20120802/1343888720
勝手にトラックバックしたあげく、さらに抜粋までさせていただく
『昔のアルバムを眺めていると、私と妹がおそろいのワンピースを着ている写真がかなりある。
シンプルだけど、襟にレースがちこっと付いていたり、ポケットが付いていたり。
母よ、こんなワンピース作れたんじゃん! と言うと
「しょうがないじゃない、貧乏で服が買えなかったんだからあの頃は作るしかなかったんだよ」
今はもう作れないよ、服作るの嫌いだし、と言う。
好きこそ・・ではなくて、生活苦こそ、ものの上手なれ、って場合もある。』
う、うらやましー。





小学校の授業で『母の日にお母さんに感謝している事を言って行こう』と先生がおっしゃった。
日頃から感謝しているが、こう言う場でわかりやすい感謝を捧げる事例がワタシにはあった。
言うべきか、言わざるべきか…苦悩していると、前列の雪子さん(仮名)が
「お母さんは私にいつもお洋服を作ってくれます。とても嬉しいです」と言った。あぁぁぁぁ〜。
雪子さんは色白で長いまっすぐな髪、パッチリしたおめめのしっとり系お嬢様である。いつもちょっとシックな、襟に素敵なレースのついたワンピースを着ている。もしや雪子さんが花梨さんなのでは!?
「いいなぁ〜」どこからともなく声が上がった。先生も満足そうである。
ぐ、ぐぬう…
そう、ワタシも同じことを言おうと思っていた。
そして、感謝しなければと思いつつ、ワタシは…ワタシは、母の作る服が嫌いであった。


母は和裁と洋裁の免状を持っている。
ワタシが子どもの頃は、今みたいに子供服がたくさんある時代ではなかったし、安くはなかった。
小さな頃から、母はワタシ等姉妹の洋服を作ってくれたし、大人のセーターをほどいて子供用に編み直したりしてくれていた。
「お前達は幸せだよ、裁縫の免状のあるお母さんが居て」とパピー(父)はよく言っていた。


朝、洋服の入ったタンスの前で何を着て行くか選ぶ。
「……お姉ちゃん、今日『ヨロイ』しかねーわ」「……今日は『ヨロイ』か」
『ヨロイ』とは、細いシロクロのストライプのワンピースである。しかしながら、ものすごい重いものを入れるバッグに使うような頑丈で重い生地なのだ。ゴワッゴワしてて固い。ズドーンとした箱なようなデザイン。姉はコレを『鎧』と命名していた。胸元に向日葵のワッペンがついていて、さながら勲章である。
コレを着ると、とりあえず定規の剣で戦いたくなる。

「今日は『オバハン』ですわ」「やべー!来た『オバハン』!」言葉遣いにも厳しかったのでこんな事言ったら百叩きだが、こんな心境である。
『オバハン』はよくわからないスカートである。布団の生地のような大柄の花柄で、色がなぜか褪せたようにうっすいのだ。
上に何を着てもすべて否定される力強い一品である。


と言うように言い始めたらきりがないほど、母の作る服は、何と言うか、トキメキが1ミリもない服であった。

母にさりげなく「レースとかなんか可愛い服が欲しい」と言った事がある。(さりげなくない)
母は「生地も安くないんだよ。安い中から選ぶと、なかなか思うようなものは作れないんだよ。学校は勉強する所、学生のうちは着飾らなくてよろしい。子どもはそのままでかわいいんだ。」といつもの台詞。ワタシがよく病気をしたので、母は仕事を辞めたのだ。お父さんも若い頃はお給料も安くて大変なんだよ。と聞かされていたワタシは、素直に我が儘言ってごめんなさい、と思っていた。


小学校も高学年になってくるとわかってくる。
お母さん、センスねーな、と。


以前、ワタシの母の容姿を聞かれて「サイババです」と言って爆笑した話を書いた。
なぜその髪型なのか?子どもの頃は触れては行けない気がして聞かなかったが、少し大きくなって聞いてみた。
母は「パーマはお金がかかるんだよ。何回も行けないから、行った時にキツくパーマをかけてもらうんだよ」と言った。お母さん!!そんな家の事を考えた理由でそんな大仏みたいな髪型に!
お母さん大好き!と思っていた。

ハッキリ言おう。センスねーんだっつーの!もうパーマかけないで〜!このまま行っちゃうと、おじさんだかおばさんだかわかんない人になっちゃう!!
まぁ技術の進歩で、母のパーマも野村幸代くらいのゆるいオバハンパーマになったのだが。


そんで、その娘であるワタシの髪型は、母が切っていた。
マッシュルームカットである。
サイババビートルズを作っていたのだ。
今でこそちょっとしたおしゃれガールがマッシュルームにしたりしているが、サイババ母のは『目に髪がかからなくて、顔に髪がかからない』ように切った実用使用である。
ビートルズと金太郎を足しっぱなしにした斬新なヘアであった。


こ の 恨 み は ら さ で お く べ き か


旦那さんが、nicoの小さい頃の写真が見たい、と言うのを阻止していたのだが、実家からアルバムを送って来やがって、旦那さんが「きっとすごい美少女だぞ!」と喜び勇んで開いたあの時の顔。すぐ閉じやがった。なんかガリガリでヒョロヒョロのマッシュルームが見えたらしい。
ワタシだって、うわさの姫子みたいな髪型にしたかった。

学校でカチューシャが流行ったとき、ワタシはそれがとても欲しかった。でも「着飾らなくていい」と言う母には言えない。ワタシはジーンズ地のジャンパースカートの細いベルトを持って行って、学校でヘアバンドにしてみた。「かわいい〜」と言われ嬉しかった。だが、その中の1人に「可愛いけど、それちょっと見せて」と取られてしまった。「コレ、ベルトじゃん。変なの〜」と言われてすごく恥ずかしくなった。やっぱりお母さんの言う通り、着飾ろうとしたからこんなことになったんだ、と。でもふだん大人しい花ちゃん(仮名)が「これベルトなんだ〜、ヘアバンドにしてもかわいいねぇ」と言ってくれた。花ちゃん!ワタシ花ちゃんみたいな優しい子になるわ!(なれず)



先日、姉と実家に行った時に、母が「アンタ達の服がまだあるんだわ〜」と出して来た。
姉と「やべーヨロイ来る!」と思っていたのだが、丈夫なヨロイは無く、ワタシが3歳の時に母の妹の結婚式に着た、母の手作りのドレスであった。レ、レース使ってある!しかも飾りレースすげぇちゃっちい40年近くたって、うちの娘が喜んで着ている。「いいなぁ、ママこんなの作ってもらえて」………コレと水色の吊りスカートだけが可愛かったんだよ!馬鹿め!と思いつつ、姉とワタシは遠くを見つめたのであった。

ワタシの産まれる前からある、ネスカフェの瓶に入ったボタン。服を捨てる時にボタンだけ別に取っておくのだ。これでよく遊んだ。

娘にせがまれて作ったマスコット。ワタシも人のセンスの事を言えない。


母が娘に買ってくれたロンパース
………結構、着た。


きなこさんがトラックバックしてくださいました〜
「不器用ですから」
http://d.hatena.ne.jp/kinakonako/20120808/1344411121
笑えて切ないのはコチラです。